令和3年度埼玉県公立高校入試 数学(選択問題)レビュー

こんにちは。
公立高校受験指導専門塾
英泉塾中浦和校の佐藤です。

 

2021年2月26日、埼玉県公立高校入試の学力検査が終了しました。

受験生のみなさん、お疲れさまでした。

3月1日に実技試験や面接があるという受験生もあともう少しです。

最後までやるべきことをやっていきましょう。

 

今回、昨日行われた埼玉県公立高校入試の数学(選択問題)のレビューを行っていきます。

問題構成は例年通り

今年の埼玉県公立高校入試の数学(選択問題)の問題構成は以下の通りです。

大問1 小問集合(44点)
大問2 作図・関数と図形の融合問題(11点)
大問3 式による説明(12点)
大問4 相似な図形(18点)
大問5 二次関数(17点)

昨年と比較すると各大問の配点は若干異なるものの、大問5題構成は例年通りでした。

今年度は試験範囲の縮小がありましたが、その影響もありませんでした。

 

昨年度より難易度は上がったか

これまでの埼玉県公立高校入試の数学(選択問題)の平均点は以下のように推移してきました。

平成29年度入試(2017年実施)43.2
平成30年度入試(2018年実施)43.7
平成31年度入試(2019年実施)53.5
令和2年度入試(2020年実施)55.2
令和3年度入試(2021年実施)?点

今年度は埼玉県公立高校入試に選択問題が採用されてから5回目の入試でした。

最初の2年の平均点が43点台、その後の2年の平均点が50点半ばといったところです。

今年度の入試は入試範囲の縮小もあり、そこまで難しい問題を出してこないのではないかと思いましたが、その予想は裏切られました。

問題ごとの解説は後ほどしていきますが、問題全体から受ける印象は、解けそうで解けない問題が多いな、ということです。

試験時間が50分という中で、これぞ選択問題というボリュームで、ヒントも少ないため、多くの受験生が苦戦したのではないでしょうか。

今年度の選択問題の平均点は、49点と予想します。

 

簡単な問題が勝負の分かれ目

これから問題ごとに分析していきます。

問題と解答は埼玉県教育委員会のページからアクセスできます。
※PCによる閲覧推奨

大問1 解きやすい問題多し+(10)が厳しいか

(1)は選択問題ではお馴染みの問題。この問題は落とせません。

(2)も選択問題ではお馴染みの問題で驚くようなものではありませんが、問題の難易度自体は高めです。この問題が正解できるかで差がつきそうです。解法は以下の画像も参考にしてください。

(3)は置き換えて解くことができれば、大幅な時間短縮につながります。解法は以下の画像も参考にしてください。

(4)は典型的な二次関数の変域の問題。学校ワークにあってもおかしくない問題です。この問題も落とせません。

(5)は有効数字の問題。あまり埼玉県公立高校入試では見かけない問題ですが、決して難しい問題ではありません。基本問題と言ってもいいでしょう。

(6)は資料の活用の問題。中央値がどの階級にあるかを冷静に考えられれば、確実に正解できるはずです。

(7)は空間図形で選択肢から答えを選ぶ問題。緊張と焦りがある中でこの問題を出してくるあたり、やはり埼玉県の入試も侮れないなと思わせる問題です。ここで間違える受験生も一定数いたでしょう。

(8)は連立方程式の利用の問題。色々な問題集で見る問題ではありますが、割合が絡んでくることもあり難易度は低くありません。

(9)は確率の問題。この問題は落とせません。“袋に戻してから”というワードを見逃さなければ、正解にグッと近づきます。

(10)は厳しい問題ですね。本番であれば、この問題は後回しにしても何も影響がない問題です。とりあえず飛ばして、大問2以降で解ける問題を探しましょう。

大問2 作図チャンス!

(1)の作図はチャンス問題です。この問題で落とすわけにはいきません。「こういうときはこの作図」ということがこれまでの受験勉強でストックされていれば、あまり考えることもなく作図に取り掛かれたのではないでしょうか。

(2)は関数で回転体の体積を求める問題。こちらも(1)と同様、普段の勉強でこういった問題をどれだけ解いてきたかで正解できたかが大きく変わってきます。普段からこの手の問題を解いていれば、難なく正解できたと思われます。反対にあまり解いていない受験生にとっては、ここで多くの時間を使わざるを得なかったでしょう。

大問3 (2)が解けそうで解けない

(1)の説明する問題は「4で割ると1余る自然数」を文字で表すことができたかどうかにかかっています。確かめ算の要領で「4n+1」と表すことができれば、6点とれたはずです。

(2)の問題が解けそうで解けないという印象です。大問3のような問題自体珍しいですし、その上、「7の倍数になる」というところでどうすればいいのか困った受験生も多くいたことでしょう。ちなみに【Cさんの予想】のところで、x=1を代入すると簡単に答えは出てしまいます。この問題は差がつく問題であり、たとえ正解できなくても気にする必要はないでしょう。

大問4 (1)から難しい…

大問4、関数より先に図形の問題が来ました。ですが北辰テストを受けてきた受験生なら、何も違和感なく解き進められたことでしょう。

(1)は線分の長さを求める問題ですが、いきなり難しい。△ACDと△ABCの相似を用いてAB=9cmまではわかっても、その先が?となった受験生も多くいたことでしょう。この手の問題はどこか2つが同じ大きさの角になって、だから二等辺三角形となって…というのがありがちなパターンです。この問題もそれがあてはまります。△ACEがAC=AEの二等辺三角形です。したがってBE=AB-AEで、BE=9-6=3cmとなります。詳しくは以下の画像も参考にしてください。

(2)は相似の証明です。埼玉県より解答の例が発表されているので詳細は割愛します。1つ言えるのは、この問題も難易度が高いです。

(3)は面積を求める問題。「底辺の比からある部分の面積を求める×2→二等辺三角形であることを用いて異なるある部分の面積を求める」、この順番でできます。しつこいようですが、この問題も難しいです。解法は以下の画像も参考にしてください。

大問5 (1)は確実にとっておきたい

今年度の入試は放物線が出てきませんでした。動点の問題でした。平成27年以来の出題になりますかね。

(1)は落としたらまずい問題です。変域も含めて、焦らず考えましょう。

(2)、面積比が3:1になる問題です。この問題を解くためにはいくつかの場面ごとに分けて考える必要があります。そして厄介なのは、その考え方が1つでは済まないというところです。具体的には、点Aを出発して0~6秒後と6~10秒後で、考え方が異なるということです。0~6秒後、6~10秒後、それぞれの考え方自体は珍しいものではありませんが、動点の問題でこれらが混ざってくるというのはほぼ見たことありません。試験中にこの頭を切り替えができるか?ということになりますが、とても厳しいことでしょう。解法は以下の画像も参考にしてください。

(3)は面積が半分になるときを求める問題。この問題も埼玉県より解答の例が発表されているので詳細は割愛します。1つ言えることは、余裕をもってこの問題にたどり着いた受験生はほとんどいないでしょう。それくらい今年度の問題のボリュームは例年よりもすごかったですね。

 

おさえておきたい問題はこれ!

今年度の埼玉県公立高校入試の選択問題数学で、正解が必須の問題は以下の通りです。

大問1 (1)・(3)~(9)(34点)
大問2 (1)(5点)
大問5 (1)(5点)

合計で44点です。

浦和高校や浦和一女高校、大宮高校など、トップ校に合格したい受験生はもちろんこれだけでは十分ではありません。

合格するためには、大問1(2)や大問2(2)などで44点からさらに上積みする必要があります。

前述したように、とにかく「解けそうで解けない」問題が多い!

50分の中で得点を最大限取れるよう問題を選んで解く、冷静な状況判断を求められるのは今年度も相変わらずですね。

 

最後に

今年度の埼玉県公立高校入試の選択問題数学、難問もいくつかありましたが、とても質の高い入試問題だと考えます。

数学を入試当日まできちんと勉強してきた人は(多少満足いかなくとも)よくできたでしょう。

数学をあまり勉強してこなかった人はかなり苦戦したでしょう。

何をそんな当たり前のことを…

と思う方もいらっしゃるでしょう。

 

10年ほど前の埼玉県の数学の入試問題は勉強してようがしてまいが点を取れなかった問題だった、ということをご存知でしょうか?

ほとんどの受験生が解けない問題がかなりあって、受験生の間で点数差がつかなくて、問題視されていた時期があったのです。

その頃の数学の平均点は、全県で40点前後。

いくら数学の勉強を頑張っても、それが入試の点数に反映されづらかったのが現実でした。

 

今の埼玉県の数学の入試問題は違います。

学力検査問題であっても、学校選択問題であっても、しっかり勉強した人が高い点をとれる問題になっています。

例えば学校選択問題の大問1、これは日頃の継続的な勉強がそのまま点数に直結します。

今年度の学校選択問題の大問1であれば、(10)を除いて珍しい問題ではありませんので、入試当日までに同じような問題を目にしたことがある受験生も多かったことでしょう。

大問1で34~38点取ることができれば、他の部分での正解も考慮して、おそらく平均点をらくらく超える点数を取ることができるでしょう。

要は、一見難しい学校選択問題であっても日頃の努力で平均点を上回る点数を取ることができるようになる、ということです。

少なくとも英泉塾では、そのための方法や問題を適切な時期に確実に提示します。

 

今年度の学校選択問題が特に顕著なのですが、埼玉県の数学の入試問題は全学年の単元の知識、解法をフル動員で使わないと解けません。

もちろん問題全体を見ると、中3で学習する単元を中心に出題されています。

ですが、大問1には有効数字の問題や、展開図を組み立ててねじれの位置にある辺を探す問題など、今の中1生でも解けるような問題もあります。

また、大問5の動点の問題ですが、中1の比例や中2の1次関数の問題で、同じような問題を目にしたことのある人もいるはずです。

今年度は、入試の出題範囲が縮小されたことも大いに関係があるのでしょうが、中1、中2で学習する内容が頭に入っているかを問われる問題も多くありました。

出題した埼玉県の意図として、中学3年間どれだけ継続して努力してきたかを計りたかったのでしょう。

今年度の学校選択問題はまさにそのような問題でした。

 

未来の受験生に伝えたいことは、日頃の勉強がそのまま受験勉強になっている、ということです。

常日頃から受験を意識して勉強しよう、というわけではありませんよ。

特に今の中1生からしたら、受験と言われてもなかなかイメージがわきませんよね。

今続けている勉強、努力が報われる日が必ず来るので、ぜひとも継続して勉強してほしい、ということです。

埼玉県の入試は、”定期テスト前だけ”がんばる勉強ではなかなか通用しない、厳しいものであるとも言えます。

 

来年、もしくは再来年受験だからといって、問題集を買い込んでこれまでの単元を慌てて総復習、なんて必要は一切ありません。

まず、今行っている勉強を大切に。

その積み重ねです。

英泉塾では、来る時期が来たら、受験のためにするべき勉強を提示しますので、ご安心ください。

 

長くなりましたが令和3年度埼玉県公立高校入試の数学(選択問題)のレビューは以上です。

繰り返しになりますが、受験生のみなさん、本当にお疲れさまでした!

3月1日に実技試験や面接があるという受験生はあともう少し、気を抜かずにやるべきことをやっていきましょう!