大学入試改革レポート:東京大学文学部開催「ことばの危機ー入試改革・教育政策を問うー」

 

大学入試改革レポート:東京大学文学部イベント「ことばの危機ー入試改革・教育政策を問うー」に行ってきました!

この記事は、大学入試改革や大学入学共通テストに関心のある方に向けた、教育改革における「国語」に関するイベントのレポートになっています。高校の新学習指導要領、新テストの実用文書出題などをめぐり、人文界の知識人からは「高校の国語から文学が減る」といった懸念が出ています。この点について、人文系の専門家がどのような考えを持っているかを知るため、東京大学文学部のあるイベントに参加してきました。

※このレポートはイベントに参加した一個人としての私的なものです。

 

このイベントに参加した理由

さて、来年に迫った教育改革の一つの流れである「国語」における変更。「新大学入学共通テスト」のプレテストに、契約書、条例、新聞記事などのいわゆる「実用文」が問題文として出題されたことをご存知の方も多いかもしれません。また、教育改革の一環である高校の学習指導要領の改訂。この新学習指導要領では、「論理国語」「文学国語」「言語表現」「古典探究」が選択必修科目(どれかを選択して履修しなければならない)となります。この変更によって、高校の国語の授業の中で、文学を扱う時間が減少することが予想されています。

※学習指導要領の改訂についてはこちらのサイトで分かりやすく解説されています。

英泉塾は「国語」「人文の知」を根幹としてきた学習塾として、この教育改革における「実用国語化」という流れに違和感を抱いています。そのような中、今回、東京大学文学部の教授陣による、この「実用国語化」の動きに警鐘を鳴らすイベントが開催される!ということで英泉塾国語科として、このイベントに参加してきました。

 

どんなイベントなの?

今回行ってきたのは東京大学ホームカミングデイのイベント「ことばの危機ー入試改革・教育政策を問うー」です。

https://www.u-tokyo.ac.jp/adm/hcd/event/2019_event_66.html

今回は教科としての「国語」に焦点を当て、新テストの問題例(記述問題)、新指導要領等が公示される中で、文章を読み解く「人文知」の根幹、あるいは「読解」という概念が大きな危機を迎えていることに警鐘を鳴らしたいと考えています。

登壇者は東京大学文学部の先生方です。

司会:
安藤 宏文学部教授(日本文学(国文学))
スピーカー:
阿部 公彦 文学部教授(英語英米文学)
沼野 充義 文学部教授(現代文芸論)
納富 信留 文学部教授(哲学)
大西 克也 文学部長(中国語中国文学)

 

内容を簡単にまとめると

まず、どの先生も教育改革における「実用国語化」という流れに対して強い危機感を持っているということが分かりました。実用的な文書の読み書きを行うことで、論理的表現力、批判的思考力を鍛え、実社会で役に立つ力を育てようということ自体は悪いことではないと思います。しかし、国が進めている教育改革は経済界の要請という要素が強く、「経済的価値を生み出さないものは不要である」というようなものに映ります。どうも、文学を軽視しており、お金に換金できない価値は見えなくなってしまっていると思わざるを得ません。

とはいえ、教育改革はすぐそこまで迫っています。大学入学共通テストは来年度から実施されます。
では、私たちはこの流れにどのように向き合って、具体的に何をしていくべきなのでしょうか。

 

これからするべきことは?

国語における改革にどう対応し、どのように向き合っていくべきと考えているか、最後に少しお話ししたいと思います。

まず、私たちは学習塾であり、新テストに対応し合格するための得点を取るための指導はもちろんやっていかなければなりません。これまで英泉塾の大学受験科では、推薦AO入試対策の一環として小論文指導を行っており、実用的な文書の読解や論理的文章力の養成をしています。この強みを生かして、新テストの国語にも対応していきます。そして、試験で得点を取るための実力にとどまることなく、批判的思考力や論理的思考力を高めていけるよう、カリキュラムを整えたいと考えています。

そして、英泉塾は「国語」に力を注いできた塾として、「文学」の重要性も変わらずに持ち続けます。具体的には小中高の各段階で、国語科授業とその他の取り組みの中で、文学を味わう機会を引き続き積極的に取り入れるということです。
小中学生クラスでは俳句の創作、名文の暗唱、作文教室などを行っています。先生たちが子どもたちにおすすめする本をまとめた冊子を作成・配布して読書を啓蒙しています。教室にはたくさんの本を置いて子どもたちが自由に読書する環境があります。
教育改革の流れに追随して文学・人文知を軽視する姿勢には強く反対します。

生きた「ことば」というものの複雑さ、豊かさ。コミュニケーションの難しさ。言語表現の不完全さ、人間の不完全さ。それらを教えてくれる「文学」というもの。ことばへの畏敬の念を忘れ、目先の単純明快さや性急な答えが求められているように感じます。

しかし、これからの時代こそ、様々な場面で、人文学によって学ぶことのできる「目に見えない」力が求められるのではないでしょうか。皆さんにも、新入試を乗り切るためだけの浅い能力でなく、本質的な力をつけるための行動を選んでほしいと考えます。

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